妻と息子の話 ~終わりのないゲームを巡る争い~
48歳男子PINEです。
我が家のゲームを巡る争いは、いつ終わるのだろうか。
仕事中に突然、これまた仕事中の妻からLINE。そこには、
「また、怒ってしまった」
と一言。
会社の同僚や後輩に怒ったことを、僕にLINEしてくるなんてことはありえない。怒っている相手は、小学校4年生になる息子である。でも、怒っている理由は書いていない。
すでに冬休み、一人で家にいる息子。
この日はテニススクールの日、ま、まさか、またラケットを忘れて妻に電話してきたのか。と悪い予感。
忘れ物番長の息子は、テニススクールにラケットを持たずに行くという、のび太くんみたいなことを何度かしている。でも、そうではなかった。
理由は、ゲームのことだった。
なるほど、前日の火種がまだ残っているにもかかわらず、息子の奴、またゲームのことで妻を怒らせてしまったのか、、、、これはやばい。まじやばい。
ここからは前日の話、
その日は、冬休みにはいった息子と、仕事が休みだった妻は2人で家にいた。
僕が仕事から帰ると、明らかに険悪な雰囲気が部屋を満たしていた。
いつもはしていない勉強をしている息子、「お帰り」も言わない。こんな時は、だいたい怒られて反省したフリをしている時だ。一方、妻のほうは誰が見ても「あなた、今、機嫌がかなり悪いわよね」と分かる表情を隠そうともしない。こちらは、マイナスオーラをしっかり含ました「お帰り」という言葉を僕に突き刺してくる。
とりあえずこの状況を打破しなければと、聞きたくはないが、悪い雰囲気になった理由を妻に聞いてみると。思わず、笑いたくなった。のを我慢した。確かに、息子がそんなことをやらかした時の妻の怒りは想像に難くない。
その日は、午前中そろばん教室の日だった。そろばん教室が終わった後、友達と遊ぶ約束をしていて、いつもより張り切ってに出かけて行った。でも、息子のその張り切りが空回りしたようだったのだ。
なんと、息子は友達と遊ぶためのゲーム(任天堂SWICH)だけをカバンに詰め込み、大事なそろばんを家に置き忘れてしまったのだ、、、ラケットの次はそろばんである。
男の子にはありがちだよね、などといった理由が女である妻に通じるわけなく。怒り収まらない妻は、息子に厳しい言葉をぶちまけていた。まさに愛のムチである。妻の名誉のため、具体的に何を言ったかは省略する。
まるでスイスのように中立な立場をとっていた僕は、必死でこの険悪な雰囲気を打開する方法を考えていた。やばいぞ、このままでは、息子はゲーム禁止になる可能性もある。そうなると、ちょっと可哀そうだぞ。
息子にぶちまけている妻の言葉をよくよく聞いてみると、今回のそろばんを忘れたことだけでなく、ふだんからゲームをやり過ぎていることにも妻は不満を抱えていることが分かってきた。今までも、なんとなく1日でゲームができる時間のルールを作ってきたのだが、友達が遊びに来たりするとその決まった時間もウヤムヤになっていた。
これは、いよいよゲームのルールを明文化する時が来たな。
そう、息子自身でルールを決めそれを文字にする。そして、常に家族全員が見えるところに貼っておく。しかも、ルールを破った時の罰までも息子自身が作る。自分で決めたことだから言い訳はできない。
そして、息子は「ゲームする時のルール」を仕上げた。
これがそうである。
〈ゲームをする時のルール〉
①ゲームを1時間して20分休む
②ゲームをできる時間は1日3時間まで
③一人でやるにはお父さんかお母さんの許可が必要
そして、ルールを破った時の罰は、1か月ゲームをやらない。
これに加え、友達と一緒の時にしか、ゲームはしないことになっている。
3時間という制限を、息子としては4時間にしたかったようであるが、それは妻が絶対に許さなかった。すぐに任天堂SWITCHは、制限時間3時間と設定された。3時間を過ぎると電源が切れてしまう。次の日になるか、親の許可がないとその日はもうゲームをすることはできない。
しかし、そろばん教室にそろばんの代わりに任天堂SWICHを持って行くという離れ業をやり、ゲーム禁止になる寸前だったことなど忘れ、ゲームの制限時間に対して、妻と政治的駆け引きをする息子に、、、僕は一抹の不安を感じずにはいられなかった。こいつ反省しているのか、、、、と。
このルールが制定されたことで、妻と息子のゲームを巡る争いは、一時的に休戦にはいると思われた。
以上が、妻が僕に「また怒ってしまった」というLINEをしてきた前日に起こったことだ。
ルール制定した次の日。事件は起きた。
仕事中の妻に息子から電話がかかってきた。どうも、友達2人が我が家に遊びに来て、3人で協力して戦うというようなゲームをしていたようだ。
息子は制限時間の3時間になり、ゲームができなくなったようなのだ。友達はできているが、自分だけができなくなったいた
そして、息子から妻に次のような電話がかかってきた。
息子「おかーさーん、3時間たっちゃったから、時間もう少し伸ばしてくれない」
妻「はぁ~~~?、なんで??約束したよね、そんなもん伸すわけねーじゃん」
妻の声が友達にも聞こえていたのか、
遠くのほうから、「え~~~、いいじゃないですか~~」
と、息子をバックアップする友達の声。
その声に、妻はさらにブチ切れる。
「もう、みんな帰ってもらいなさい!!!ゲームは終わり!!!」
と怒鳴って電話を切ったようだ。
このやり取りの後に、妻の「また怒ってしまった」というLINEが僕に送られてきたのだ。仕事中ということもあり、僕が家に帰ってから息子と話してみるということでその場は終わった。
そして、仕事が終わって家に帰ると、「お帰り」と明るい息子の声。自分がかなりやばい状況に置かれていることが分かっていない。たぶん、妻に電話をした時は、友達と一緒にいて、かなり調子に乗っていたのだろう。
僕「今日、何かあった?」
息子「とくに、何もなかったよ」
僕「あっ、そう。お母さん、かなり怒ってたけど」
息子「えっ、なんで???」と急にビビり顔に。ある意味、尊敬できるほどの鈍感力を兼ね備えている息子は、自分がした過ちに全く気付いていないのだ。いわゆる、バカなのだ。
父としては、約束するってことの大事さを分かってほしいという気持ちもあり。息子がしでかしたことを、たとえ話などを使いながらとくとくと説明した。
説明を聞きながら、妻がどれほど怒っているかを感じ取り、絶望的な表情で床に突っ伏してしまった。お母さんに怒られるのをなによりも恐れている息子にとっては、最悪の状況である。父親として、これ以上は追い込みまい。
しばらく放っておこうと、僕は風呂に入った。
風呂から出ても、息子は突っ伏したままだった。男同志、同情の気持ちがでてくる。
妻の怒りが少しでもやわらぐ方法を一緒に考えてみるかと提案した。そして、
やっぱり手紙しかないな。という結論になった。
その日、妻は忘年会、息子が眠りについた後に帰ってくるだろう。だから、顔を合わせずにすむ。顔を合わせる前に手紙で謝っておくことは、妻の怒りを半減させるほどの効果があるのではないかと期待したのだ。
そして書いたのが、この手紙。
果たして、妻はこの手紙を読み、息子を許す気持ちになるだろうか。
「ごめんなさい」を2度も書いている。
息子は、無茶苦茶反省して2度も書いたのだろうか、いや、それともいつものように何も考えないで2度書いたのだろうか。
たぶん、後者だろう。
我が家のゲームを巡る争いは、まだまだ続きそうである。