だんだんな気持ちで淡々と暮らす

淡々とした生活の記録

【親父と僕の話⑤】 札束、ピストル、そして上皿てんびん

タイトルを見ても意味が分からない。もっと分かりやすいタイトルのほうがもっと関心が持たれやすいだろうなとは思う。でも、このタイトルが頭に降りてきちゃったから、しょうがない。読めば、分かるんだけどな~。当たり前か。

 

さて、親父の話も5回目になった。もう、いいだろと言いう人もいるだろう。いや、そんなに読んでいる人いなかった。残念。

 

これは、僕が小学校6年生くらいからの話。相変わらず、親父は仕事をしては辞めるを繰り返していた。にもかかわらず、じいちゃんが死んですぐに家を建て直した。見栄っぱりな人だから、近所一のボロ家は嫌だったのだろう。でも、8年後には、ローンが払えず、追い出されたけどね(笑)

 

仕事もせず、ローンも増え、家は立派になったが、いつも母親の口からは「お金がない」という言葉が呪文のように唱えられていた。だからだろうか、ちょっと頭が良かった僕には「弁護士になれ」、頭は悪いがかなり可愛かった弟には「ホストになれ」と教育された。素晴らしい教育方針である。

 

ある日、そんな我が家に、不似合いな物を親父が持って帰ってきた。

それは、100万円の札束2つだ。帯がついたやつね。

 

ほとんどの家族がそうであるように、帯のついた札束なんて、いつもある訳ではない。いや、こう書くと時々あるみたいだな。じゃなくて、ある訳がない。親父は、ぼくら兄弟を喜ばしたかったのだろうか、それともただ自慢したかったのだろうか、今となっては分からない。たぶん、後者だろう。自分の子どもにマウンティングしてどうする。

でも、僕たち兄弟は、初めて見たその札束に興奮したのを覚えている。びた一文たりとももらえなかったけど。

 

 

札束が来て、しばらくすると、また、我が家に不似合いな物がやってきた。

それは、本物のピストルだ。おまわりさんが持ってるやつね。

 

 

ほとんど家族がそうであるように、本物のピストルなんて、いつもある訳ではない。いや、こう書くと、時々はあるみたいだな。じゃなくて、ある訳がない。いやいやそれも違う、あってはならない。銃と刀は持ったら違反なんだから。親父は僕たち兄弟を喜ばしたかったのか、それとも自慢したかったのか、今となっては分からない。たぶん、後者だろう。やっぱり変わっている、子どもにピストルを見せびらかして喜ぶ親はいるだろうか。いやいない。

 

今でも、ピストルははっきりと覚えている、押入れから出してきた箱も、黄色い油紙に巻かれた姿も、手に持ったずっしり重い感触も。

 

 

この頃、我が家がどんなだったかははっきり思い出せないが、200万円とピストルの映像は今でもはっきりと浮かんでくる。それくらい、子どもにとっては衝撃的なことだった。大人にとってもか(笑)

 

 

今なら、親父が何か悪いことをしているなというのが分かる。急に大金を持ったり、ピストルを持ったりなんて、明らかにおかしいでしょ。しかも、ピストル持ってるのは、犯罪だし。でも不思議なもので、その時の僕には、親父が悪いことをしているという感覚はなかった気がする。自分の親が犯罪を犯しているなんて夢にも思っていないし。モデルガンがあるくらいの感覚だったんだろう。

そう、子どもはとことん親を信頼しているものさ。

 

 

ピストルの次に来たのが、上皿てんびんだった。ピストルから上皿てんびんって、犯罪者が科学者になるくらいのギャップ。別に上皿てんびんはありでしょ。もちろん相棒である分銅も。って聞こえてきそうだ。まあいい。 でも、こいつが一番やっかいな奴になった。上皿てんびんには罪はない、悪いのはそれを使う者だ。

 

ほとんどの家族がそうであるように、はもういいか。ははは。もしかしたら、上皿てんびんはあるかもしれない。ないか。

僕は、理科の授業で使ったことがあったので、上皿てんびんを知っていた。それを押入れの奥に見つけた時は、「なぜ、うちにあるの?」と不思議には思いはしたが、なぜかは親父に聞かなかった。やっぱ、なんかやばさを感じていたのかなー。

 

 

タイトルの通り、札束、ピストル、そして上皿てんびんが我が家にそろった。なかなか、一般家庭にはそろわない面子である。

 

親父は気楽なもんで、ちょっと悪いことをしているという世界にどっぷりハマっていたと思う。中学生みたいに。たぶん、小指が半分になる前、つまり10代の頃の親父に戻っていたのかもしれない。その子どもはたまったもんじゃないんだけどね。

 

お決まりのことであるが、調子に乗り高い所に登ったら、そこから降りなければならない日がやってくる。そして、すぐにやってきた。それはジェットコースターのごとく。

ぎゃ~~~ってくらい。

 

またまた、ブログ書いていて思うのは、トンデモナイ親父だったってこと。まさに反面教師。逆を行け!

 

僕は、小5になる息子に「これは本物ピストルだぜ、お父さんすごいだろ」と自慢することはないだろう。まあ、そりゃあたりまえ。