だんだんな気持ちで淡々と暮らす

淡々とした生活の記録

【親父と僕の話⑦】人生で一番つらかった1日

人生で一番つらかった時っていつ?って聞かれたら、即答できる。

あの時ではなくあの日だ。って。

前回は、一番つらいちょっと手前の頃を書かせてもらった。

 

pinewood13.hatenablog.com

 

 

 

親父のことを書いているつもりが、なんだかんだで自分のことを書いている。月影つきこさんから言われたように、自分の気持ちを書きながら整理していっているのかもしれない。いや、しているな。

昔を思い出しながら書いていると、だんだん、その頃の記憶の中に入り込んでいって、やばいやばい。

 

令和2年4月6日午前8時に親父が死んだ。忘れないうちに、ロクデモナイ親父のエピソードを書こうと思った。始まりはただそれだけだった。今回は塀の中にいる時のことだけどね(笑)

 

 

では、前回のつづきを書きます。

 

 

 

親父が逮捕される前なのか、後なのか、はっきりしないけど、とにかく親父が家にいなくなってから、親父の友達という男の人とその娘さんが我が家によく出入りするようになった。

その男の人は親父と似ているところがあった。それは、体に派手な絵が描いてあり、小指が半分ないことだ。違うところは、親指だけで腕立て伏せができるところ。また、それが自慢であった。僕らは腕立て伏せを何度も見せられた。新たな、自分大好き人間現る。アイムタイアード。

そう、僕はとても疲れていた。どうしようもなく。頼れない母親に代わって、この男の人が僕たち兄弟を助けてくれるかもしれない。と、思ってしまった。だから、その男の人に懐いているフリをしていた。あっーーーー思い出すと、ゲロ吐きそ。汚い言葉をごめんなさい。

 

 

 

 

でも、しばらくして、その男の人は来なくなった。同時に、母親もいなくなった。

 

 

 

朝、騒がしさで目が覚めた。我が家に、母方の父、つまりじいちゃんや、母の兄や、親父の幼馴染のおじさんが来ていた。僕たち兄弟は、何が起こっているのか分からなかったが、「お母さん、どこに行くとか言ってなかったか」とか「最近は、誰と一緒にいたんだ」とか、まだボンヤリした頭にガンガン投げてきた。

大人たちの話を聞いていると、母親が家を出ていったらしいことを知った。僕たちに何も、告げることもなく。

 

母方の父、つまりじいちゃんは少しインテリな小金持ちだった。いや、今、考えると我が家が貧乏過ぎたから、お金持ちに見えていたんだな。まあいい。その立派なじいちゃんが、僕ら兄弟を「施設にあずけるしかないか」と仰せられた。えっ、孤児院ですか。

その言葉は、僕の心を氷つかせた。タイガーマスクを観ていた僕は、すぐにちびっこハウスを思い出した。ちょっとしんどい未来が待ってそうだ。ほんと、暗闇の中に突き落とされたような気分だった、と思う。しかーし、救世主が現れた。

 

「わたしが、面倒をみます」

 

と、一緒に暮らしていた父方の母、つまり一緒に暮らしていた、海岸で荷揚げをしているばあちゃんが言ってくれたのだ。メシヤ。神。仏。足りない!もっとだ。

暗闇に一筋の光が差した。僕は、その言葉だけは一生忘れない。絶対に。何があっても、忘れるわけにはいかない。とても大切な言葉。

それまでは、まともに小学校も卒業しているか分からない、字も読めない、作った料理は全部同じ味、一度うまいといったら永遠に買ってくる、ようなばあちゃんを僕はバカにしていた。そう、いつの時代でも、バカっていう奴がバカなんだ。

 

とりあえず安心したのか、母方の父は、僕に20,000円を渡して帰っていった。それを見ていたのか、おじさんが「金を渡せばいいってもんじゃないだろ」とつぶやいた。それを聞いた僕は、「じゃあ、おまえは何をしてくれるんだよ」と心の中でつぶやいた。同情するなら金をくれ。心がほぼ完全に腐っていた。その親父の幼馴染のおじさんには、この後、お世話になったのに。ごめんなさい。

 

 

その日の夜、僕ら兄弟は、一緒の布団に寝た。布団の中で、弟に「好きな女の子いる?」と聞いた。弟は「いるけど、言わない」とニヤっと笑いながら言った。それを見て、僕もなぜか笑った。なぜ、あんなこと聞いたんだろう。

 

 

 

これが、僕の人生で一番つらかった1日の出来事だ。

 

なんてことはないと言えばそうだ。世の中にはもっとつらい思いをしている人がいる。そんなことは知っている。しばらくしたら、親父も母親も、舞い戻ってきて、ばあちゃん含め家族5人の暮らしがまた始まるしね。

 

でも、あの日に、もう取り返しのないものを失った。40年近くたった今も、やっぱりそれは取り戻せていない。

 

 

 

 

長ーい話を読んでくれた方、お付き合いありがとうございます。

 

 

 

今日は親父の四十九日。

 

親父のことブログに書き始めたことを教えてやろう。照れながらも、絶対喜ぶタイプ。

今度こそ、現世でのことを悔い改め、しっかり極楽浄土に行ってよね。でも、ほんと懲りない人だからなー、ははははは(笑)