だんだんな気持ちで淡々と暮らす

淡々とした生活の記録

【オクサンと僕の話】 たぶん、人生最大の覚悟

 

 

僕は「覚悟する」ってことを時々する。まあ、毎日するようなことではないかもしれないけど。

でも、一度覚悟したことってのは、そのことが終わるまでは永遠だというのが僕の考えだ。だから、気持ちがぶれる時は、「覚悟したんだよな、おまえは」と自分に発破をかける。

 僕の今まで最も大きな覚悟についてお話してみようかと思う。なんか、大きなことを言っている。たぶん、当たり前だのクラッカー的なことなのかもしれないけど。

 

 

僕たち夫婦は結婚式を人前式という形でした。その時、とりあえず、「この人のことを一生守ります」みたいな誓いをたてた。正直に言うと、それはただの言葉でしかなかった。形式的なもの以上ではなかったかもしれない。残念ながら、そこに覚悟など微塵もない。

 「この人のことを一生守ります」ということが、具体的にどういったことなのか、どういった考えなのか、その時の僕はまったく分かっていなかった。というか、決めていなかったというほうが近いかもしれない。

 

 

 結婚して、7年たった頃だろうか、オクサンに乳がんがみつかった。まだ、腫瘍は小さかったが、場所も悪く、タチの悪いタイプだったので、最初の診断で全摘という診断を受けた。彼女は、それに納得できず、手術することを拒否し、民間療法的なことを探した。

 そして、行きついたのが食事療法だった。それは、ファスティングを軸とし、サプリや断食を行うものだった。

朝は、野菜のすりおろし、昼は梅干し、夜は野菜サラダ、そして病院が処方するサプリメント。そんな生活を6カ月くらい続けた。彼女の体重はみるみる減っていった。髪の毛まで抜けていった。50キロ以上あった体重が40キロを切った。周囲からみたら、明らかに異常なやせ方だったと思う。

 

後から聞いた話であるが、大きな病気をしているため食事療法をしていると聞いた彼女の友人たちは、「自分が決めたこと(食事療法)を悔いなくしたほうがいいよ」」と言いながら、もしかしたらもう治らないのかもしれないと思っていたようだ。

 

僕自身も、乳がんがみつかってから約6カ月。痩せて弱っていく彼女を見ていて、本当にこんなことで治るのかと、この治療法を疑う部分もあった。でも、彼女が決めたことを尊重したかったし、信じるしかないと思っていた。

 僕ができることは、おいしく、楽しく食事療法ができるように食事を考えることと、毎朝神社に行って祈ることくらいだった。

 

 

病気と向き合いながら日々浮いたり沈んだりする彼女と一緒に過ごしながら、時々、最悪のことが頭をよぎる。そんな時、僕は強く思うのだ。

「生きていてほしい。とにかく、生きていて欲しい。」と。

 

 

彼女が病気になったことで、ようやく僕は彼女に対しての覚悟ができた。そう、

 「ただ生きているだけでいい。」って。

 

 

 あれから数年たった今も、その覚悟は変わらず僕の中にある。

 

だから、彼女が休みの日、僕が仕事から帰って、お帰りの次の言葉が、

「ごめ~ん、まだごはんの用意ができていないのよ」

と彼女から言われても、僕は笑いながら一緒に作り始めることができる。

とっても小さなことを言ってしまった、これはなかったことに。。。でも消さない。

 

長く一緒にいると、小さな行き違いから、ちょいと大きなケンカが僕ら夫婦に起こる。

そんな時、僕は僕に言う。

「生きているだけでいい、って覚悟したよな。。おまえの覚悟はそんなもんか、ダサ」

と。すると、あら不思議、自分の悪かったところに対して、彼女にすぐに謝ることができる。さらに不思議、彼女も謝ってきて、すぐに仲直りできるのだ。覚悟すげ~。

 

 

これが、今のところ、僕の人生最大の覚悟である。

結婚式では分からなかった、「彼女を一生守ります」って言葉は、「ただ生きているだけでいい」って言葉に置きかえられ、僕は彼女をこれからも守っていくのだと思う。

 

  

 

 

 

さいごに誤解がないように書いておく。

結局、彼女の乳がんは食事療法では治らず、セカンドオピニオンを受け手術を受けた。そして、今に至る。

怒ったり、笑ったりしながら、悪いことも良いことも受け入れながら、僕たち家族は幸せに日々過ごしている。

とっても、ありがたや~~。