だんだんな気持ちで淡々と暮らす

淡々とした生活の記録

【青春の話】 自転車✖恋愛=青春

 

自転車って青春には欠かせないものですよね。

自転車がない青春なんて、クリープのないコーヒーみたいなもの。

 

なんてことを、新しい自転車を乗るムスコ君を見ながら思っていた。

 

そうそう、大林宜彦監督の不朽の青春映画「転校生」でも、そうだ。内容は忘れてもいいが、小林聡美が線路横の坂道を自転車で駆け上るシーンは忘れてはいけないよーだ。

 

 

そんでもって、青春には恋愛がなくてはならない。

 

つまり、自転車×恋愛=青春なんである。

 

 

僕にも、青春時代の自転車にまつわるちょっとした恋愛エピソードがある。

ほぼほぼ、自己満足の世界かもしれないが、ここに残すのだ、あはは。

 

 

 

どこの街にもあるだろうが、僕の街でも年に1度だけ花火が上がるような夏祭りがある。その時つき合っていた彼女がいた。けど、彼女は友達と行くようだったので、僕も友達と行くことにした。そんで、花火が終わったら待ち合わせしようって話になった。

 

 

花火も終わって、彼女とその友達と合流した。時間は9時くらいかな。なんとなく、高校生にとって、夜にみんなでワイワイするって、なんかすごい特別感があるじゃないですか。そん時も、花火の興奮も冷めやらぬ感じで盛り上がっていたと思う。

 

さて、そろそろ帰ろうかってなった時、自転車で来ていた僕は「二人乗りして帰る?」と彼女を誘ってみた。列車で来ていた彼女はすぐに返事をしかねていた。そりゃそうだ、彼女の家までは10km以上はある。その道のりを自転車2人乗りなんて、しかも夜。当時の田舎の高校生にとっては、わりとスリリングなことだった。でも、結局、友達の後押しもあったりして、二人乗りして一緒に帰ることになった。

 

高校生くらいの時って、男子なら分かると思うけど、自転車の後ろに女の子を乗せて走るってのは、青春に一度はしたいことのベスト3に入ることだった。それを、星空の下でしてしまった。そう、その瞬間、僕は青春の頂に登りつめてしまったのだ、ははは。

 

まあ、そんな感じで友達に見送られ、僕らは走り出した。できるだけ、人通りが少ない道を抜けて行く。まあ、とっても田舎なので、花火の会場を離れると夜道を歩いている人なんて全くいない。

 

 

僕のくだらない話を聞いて、彼女はケラケラ笑う。そして、僕も一緒に笑う。街灯の光に照らされながら、彼女の頭の重さを背中に感じながら、僕は自転車を走らせる。

途中、遠くにパトカーのランプを見つけると、自転車を止め2人で身をひそめたり、喉乾いたから自動販売機でジュースを買って一緒に飲んだり、30年も前のことなのに、あの年で、あの時代で、あの街に過ごしていたからこその感覚を今も覚えている。

 

 

彼女の家に着いた。まだ、つき合ってから間もなかったのだけど、なんか何年も前からつき合っているみたいに、僕らの距離は一気に縮まった。なんとなく、別れがたく、まだ話をしたい気持ちを持ちながら、僕は「じゃあ」と帰ろうとした。

 すると彼女が、帰ろうとする僕に向かって

「握手しよう」と言ってきた。

「えっ」と驚く僕に、

「なんか、握手したくなっちゃったの」と笑顔で右手を差し出してきた。

僕はちょっと照れながら、汗ばむ手をズボンで拭き、彼女の手を握った。

「今日はありがとう、ほんと、楽しかった」と言ってから手を離し、バイバイと手を振り、家の中に駆けて行った。

僕は、離した手を彼女のほうに挙げて「じゃあ」と見送った。

 

 

あの時の握手は忘れらない。後にも先にも、あんなに純粋な握手を交わしたことはないと思う。彼女が、あの時、キスでも、ハグでもなく、握手をしたくなったという気持ちって、まさに限りなく青春に近い青春なんだよね、僕にとって。

 

これが、僕の言う、自転車×恋愛=青春につながっている。

 

新しい自転車を買ったムスコ君。いつか、君にも君が思う青春の公式ができることを、お父さんはとても楽しみにしているよ。

 

 

 

 

f:id:pinewood13:20200724223931j:plain