だんだんな気持ちで淡々と暮らす

淡々とした生活の記録

【小学生の僕の話】 エロ本獲得大作戦(前編)

 

40年前の日本では、男子に生まれたからには誰でも通り抜けなければならない儀式があった。そう誰もが。それは

 

エロ本を買うことである

  間違いない。

 

いまどきは、ネットでいくらでもHな画像やら動画やらが手に入る。もしかしたら、この大人の階段上る儀式は廃れてしまっているのかもしれない。その文化的損失は非常に大きく、非常に残念なことである。

 

まだ下の毛も生えそろってもいない小6の僕ら(一人を除いて)は、その儀式に人生の全てを捧げる思いで立ち向かったことがあった。まるで、アポロ11号のアームストロングとオルドリンのように。そう、それは僕らのミッションであった。

このミッションが人に知られることは許されない。誰に誇るでももなく、そっと遂行しなければならない。誰かにばれる、それはある意味、小6男子としての死を意味する。小6男子にとって、女性の裸に興味があるってことは、親にも先生にも、もちろん女子にも秘密にしておかなければならないことなのである。それが、小6男子の流儀だ。

もし、女性の裸に興味を持っていることがばれたら、家や学校でどんな目に合うか。考えただけで恐ろしい。そんな恐ろしいことは置いといて、僕らのミッションをどのように遂行したかを紹介したい。またまた、どうでもいい話ではあるが。

 

 

【エロ本獲得大作戦①】 

大人のフリをして買いに行く作戦

 

最初は、僕らの中でも一番早く生えそろった友達が大人のフリをして買いに行くという作戦をやってみた。親のジャケットと帽子をかぶるだけという、度胸一発な作戦だ。

ターゲットにした店は、今でいうニート的なオーラを持ったお姉さんとそのお父さんどちらかが店番をする、小さなタバコ屋だ。僕らとしては、他人には無関心そうなお姉さんが店番に出てきたら、何も言わずに売ってくれるのではという算段があった。

生えそろった友達は、「よし、行くぞ」と気合を入れて店に向かった。僕らはサイズオーバーなジャケットを着た彼を遠くからジッと見守ったのだった。

ドアを開け、お店に突入。そして、お店の奥からでてきたのは、お父さんのほうだった。残念。これは苦しい展開だ。どうする、、、そのまま店をでるのか、それとも作戦を遂行するのか。さあどっちだ。なんと、友達は遂行することを選んだ。すげーーー。彼の勇敢な姿に僕たちは興奮した。

店番のお父さんも小6の頃があったはずだ。もしかしたら、僕らの大人の階段上る儀式を温かく応援してくれるかもしれない。「お前らも、ここまで来たか」と優しく売ってくれるという淡い期待を抱かずにはいられなかった。

僕らの英雄は本棚からサッと目的の本を抜き取り、うつむきながらレジにだした。すると、店番のお父さんはうつむいている僕らの英雄に何かを言った。もちろん声までは聞こえない。そして、英雄はうつむいたままレジを離れ、ドアを開け何も持たずに僕らのほうに戻ってきた。ミッション失敗。

やはり、子どもということはバレバレだったようだ。一言「これは、大人が読む本だよ」と言われたらしい。いくら大人に扮しても、大人の目はごまかせない。そもそも、僕たちも大人に見えるとは思っていない。玉砕覚悟の作戦だった。

成功か失敗かは、お店の人の道徳観と利益のバランス感覚と他人への無関心さにかかるところが大きかったのだ。可能性を相手に委ねるなんて、愚かな作戦だった。もっと、しっかりした作戦を立てないと。

ここで終われば、ただの失敗だ。僕らを甘く見てもらっては困る。エロ本を見たいという欲望は、小6男子に考えられないほどの粘り強さを与えるのだ。それを思い知れせてやる。でも、僕らは、一体誰に何を思い知らそうとしているというのだ。

 

【エロ本獲得大作戦②】

お父さんに頼まれました作戦

 

大人のフリ作戦に失敗した僕らは、なんとか次のアイデアをひねり出そうと4人で顔を突き合わせた。そこで、出てきたのが「お父さんにお使いを頼まれた」と言えば、大人が買うことになるから、お店の人も売ってくれるのではないか。

今、考えると、う~~~~んと、首をひねらずにはいられない作戦だ。考えてみてほしい、どこの親が小6の息子にエロ本のお使いを頼むだろうか。もしかしたら、いるかもしれないけど、ツチノコ並みにレアだ。

でも、僕らは必死だった。他に方法がないなら、やるしかない。「エロは盲目」とはよく言ったものだ。

今度は、一番ベビーフェースな友達が行くことになった。エロ本なんて読みそうもない表情をした子どもがエロ本を買いに来たことで、「こんな小さい子どもにエロ本のお使いを頼むなんて、きっとどうしようもない父親に違いない。もし、エロ本を持って帰らなかった日には、怒鳴られ、晩ごはんも食べさせてもらえないかもしれない」とタバコ屋さんに同情され、売ってくれるかもしれないと考えたからだ。ウソだけど。

 

とりあえず、子どもがダメなら大人をだすぞってノリだ。 

 

さて、お父さんに頼まれました作戦決行の日が来た。ベビーフェースをより幼く見せる訓練を終え、僕たちは、またまたタバコ屋に向かった。タバコ屋に他のお客さんがいないことを確認し、ベビーフェースは向かった。僕たちは、遠くからその姿を見守った。

 

ビーフェースがドアを開けると、この日は、なんとニート風なお姉さんが店番だった。いけるかも。と僕らは期待に胸を膨らませた。

本棚からサッとエロ本を抜き取りレジに持っていった。そして、いつも以上に愛嬌のある顔でお姉さんにエロ本を差し出した。どうかお姉さん、つまらないモラルなど捨て去り、僕らを大人にしてやってくださいまし~~~。

しかし、残念ながら僕たちの願いは届かなかった。ベビーフェースは店に入る時と同じように手ぶらで戻ってきた。違ったのは、その顔から愛嬌が消えていたことだけだ。「ごめんなさいね。お父さんと一緒に来てもらわないとだめなの」と言われたようだ。エロ本のお使いを頼む親もレアだが、息子と一緒に買いに行くのはもっとレアかもしれない。お姉さん、おもしろい。ともかく、またもやミッション失敗。

 

僕たちはタバコ屋という高い壁を超えることができなかった。「高ければ高いほど気持ちいいもんな♬」とミスチルの桜井は歌っている。でも、たぶん、桜井でもタバコ屋の高い壁を超えることは諦めたかもしれない。この時の僕たちのように。そう僕たちは諦めたのだ、タバコ屋については。

 

打ちひしがれた僕たちは、振り出しに戻り、全く違う視点からの作戦を考える必要があることを感じていた。そう、シリコンバレーも驚かすような新しい作戦を。

 

 

つづく

 

 

失敗しても諦めない小6魂を、まだまだ見せつけたいと思っているので、続きは次回へ。ほんと、どうでもいい話を書くのって楽しいわ~~。