だんだんな気持ちで淡々と暮らす

淡々とした生活の記録

妄想癖が強い友達の話

高校時代の友達に大山くん(仮名)という人がいる。彼は地元の由緒正しき禅寺の息子であった。まあ、寺の息子だからといって、いかにも寺の息子って感じではなく、ただのヘビメタ好きのナルシストである。そう、彼は自分のことをとてもかっこいいと思っている節があった。

 

「なんかさ、バス停で会う女の子が、どうも俺に気があるみたいなんだよな」

と、なんとも嬉しそうに言ってきた。聞いていたのは、僕と田村くん(仮名)。3人でよく遊んでいた。

田村くんはわりと冷めた感じであったが、やっぱりそこは高校生、その手の話は食いつきがいい。

「なんでなん?」

と聞くと。

「いやね、バス停で良く目が合うのよ。」

ほうほう、それだけで自分のことを好きと思ってしまえる大山くんはすごい。彼ほどの思いこめる人を今だ見たことがない。

 

話は変わるが、僕らが高校生の頃はバンドブームだった。しっかりその波に乗っかっていた大山くんはデランジェというバンドが大好きだった。中でも、ギターの人が好きだった。ギターはサイファという名前で呼ばれていた。彼は、

「俺、子ども生まれたら、絶対サイファって名前にするぜ」

と言っていた。もし、彼に子どもが生まれていたら、「元祖キラキラネーム」の父としてもてはやされていたことだろう。しかし、50歳になるが、彼に子どもができたという話は聞いていない。それ以前に、結婚もしていない。

何が言いたいかというと、思い込みが強いのである。

 

「大山くんは、その女の子のこと、どう思っているの?」

と僕ら。

「いや~、けっこうかわいいし、いいな~って思ってるの」

と、大山くん。

「じゃあ、声掛けてみたらいいんでないの」

 

彼は真剣な顔をして考えこんだかと思うと、僕らの予想を遥かに超えた、声を掛けることができない理由を言った。

 

「でもさ、その女の子のお父さんがやくざだったら、どうするの。『おまえ、よくも俺の大事な娘に手をだしてくれたな』って、俺殺されちゃうよ」

 

と。。。。。。。。。。いやいや、あなた、「もしもシリーズ」にもほどってもんがあるでしょ」。。。。。

でも、そういえば思い出した、大山くんはナルシストであり、思い込みも激しいんだけど、それ以上に妄想癖が半端なかったのだった。

正直彼のこのお話も、どこからが本当で、どこからが妄想だったのだろう。謎は深い。

 

言わずもがなであるが、大山くんに彼女ができたという話は本人から何度か聞いたことがあるが、その彼女に会った人は誰もいない。