だんだんな気持ちで淡々と暮らす

淡々とした生活の記録

【息子】部活論争と親の圧

「けっこう説得されたんだけどね」

 

 

「圧がすごくて」とか、「友達の圧がやばいから、やるしかなくて」みたいに『圧』が使われる。自分の子どもへの『親の圧』。これも世の中に溢れている。無意識なこともあり、意識的なこともある。これは、親が注意しなければならないことの1つと僕は考えている。そこには自分の子どもを思い通りにしたいという親のエゴがある。以前にも言ったが、子どものやることにできる限り口をださない。ってことは僕の子育ての大きな軸になっている。この『親の圧』というのは、その逆をいくものとして僕はとらえている。

 

 

風呂に入っていると、リビングのほうから息子とカミサンが話をしている声が聞こえてきた。細かい内容までは分からなかったが、息子の部活の話をしているということだけは分かった。ここのところ、陸上部にするか、理科部にするかって論争が我が家では続いているのだ。カミサンは絶対陸上部に。息子はどちらかというと理科部に傾いていた。明日が本入部の締め切りなのだ。聞こえてくる声は、いつもの論争よりとても落ち着いており、良い話し合いができていることを期待させるものだった。いよいよ息子の部活問題はクライマックスを迎えるのかーーー、ジャッジャジャーン。

実はこの前に、息子と僕は部活について話をする場を設けていた。まあ5分くらいのものなんですけどね。それまで、僕も息子に運動をやらせたい気持ちが強かったのであるが、それは親のエゴではないかという気持ちがどんどん湧いてきて、「おまえの中学校生活が楽しくなるように選択すれば良いのでは」と伝えた。その後、「で、どうする?」と問いかけると。彼は「じゃあ、理科部かな」とサラリと答えた。理科部のほうが先輩も同級生も楽しそうなメンバーなんだ。というのがその理由だった。

僕が風呂から上がり、脱衣場のドアを開けるとすぐに、話終えた息子が、「お父さん、部活どうしたか聞きたい?」と飛びついて来た。僕は「お前が決めたならどちらでもいいよ」と聞きたい気持ちを抑え、かっこつけてみた。「聞いてあげてよ」とカミサン。二人とも明るい顔をしている。どちらも納得がいく結論がでたようだった。それまで、何度となく部活論争を繰り広げていた二人なので嬉しかった。「で、どっちにしたの?」と聞くと、「陸上部」と、しょうがねーよなを含んだ嬉しそうな顔で応えた。母の思いが勝ったのだな。

僕はカミサンに意味深な視線を送った。その視線に、「うまいこと陸上部に入るよう仕向けることができたな的なもの」を感じたのか。カミサンは「ぜんぜん説得なんてしてないからね」と聞いてもないのに、僕に言い訳っぽいことを言ってきた。そして、「ただ、いろいろ質問をして本人の考えを整理しただけ」という言葉を残して風呂に向かっていった。息子はカミサンが風呂に入ったことを確認すると「けっこう説得されたんだけどね」という言葉を僕にボソリと残し、ちょっとおどけたような、まんざらでもない顔をしながら、2階にある自分の部屋に向かった。我が家の部活論争は無事終了したのであった。

 

 

言葉による説得はしてないものの、親の思いはその言葉の端々からあふれ出し、まさに『親の圧』となる。その圧を子どもは敏感に感じとる。それは子どもにとって説得以外の何物でもないのかもしれない。親子のすれ違いってのは、こんな感じで生じるのかもな~。なんて考えながらも、息子が陸上をやることを僕も喜んだのであった。これって、やっぱり親のエゴかしら?